本稿では、LCCM住宅について簡単にご説明します。エコ住宅の建築をご検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。
今、たくさんのエコ住宅があって、混乱している方が少なくないでしょう。長期優良住宅、ZEH住宅、低炭素住宅、LCCM住宅……いったい、どこが違ってなにが同じなのでしょうか。理解しづらいですよね。
とは言え、新築住宅の省エネ化は必須になりつつあり、建築主にはエコ住宅の理解が求められています。本稿で、トップクラスのエコ住宅・LCCMの基礎知識を身につけ、家づくりの参考にしてみませんか?
LCCM住宅とは?
さっそくLCCM住宅の概要から解説しましょう。LCCMの意味や、ZEH住宅との違いについて触れていきます。
LCCM住宅の定義
LCCMは「Life Cycle Carbon Minus (ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)」の略で、LCCM住宅は「住宅のライフサイクルを通じてのCO2(二酸化炭素)の収支をマイナスにする住宅」を指します。
では「住宅のライフサイクル」とは、なにを指すのでしょうか。これは住宅の一生(建築~居住中~解体撤去~処分)と捉えていただくとよいでしょう。このライフサイクルにおいて、出来るだけ省CO2に取り組もうとするのがLCCM住宅です。
さて、よく似たものに「ZEH住宅」があります。ZEHとLCCMはなにが違うのでしょうか?
ZEH住宅は「居住中」のCO2を減らすことを主眼としています。それに対してLCCM住宅はその前後、つまり「建築中」や「解体撤去・処分中」に出るCO2も含めて正味ゼロにしようとしているのです。各ステージの取組の例をご紹介しましょう。
- 建築中:CO2発生量の少ない材料を選択・使用量の削減、建築段階の廃棄物削減
- 居住中:省エネ機器導入、創エネ、断熱、長寿命化(長く使うのも、省エネにつながる)
- 解体撤去・処分中:廃棄物抑制に役立つ材料の採用、リサイクルの促進
住宅は、その生涯において間接的に一次エネルギー(石油、石炭、天然ガスなど)を消費してCO2を排出します。これを相殺する鍵は「創エネ」です。ZEHやLCCM住宅は、太陽光発電でエネルギーを生み出し、CO2の排出量を補填する住宅なのです。
ですから、LCCM住宅はZEH住宅が満たすべき基準の達成が必須になります。そのうえで、さらに省CO2化をすすめたものがLCCM住宅で、低炭素住宅の先導的モデルになっています。
ZEH住宅については、以下の記事で解説しています。もっと詳しく知りたい方は、あわせてご覧ください。
》ZEH(ゼッチ)住宅とは?なにが得なの?認定条件は?簡単に解説
LCCM住宅の普及促進が図られている背景
さて、どうしてLCCM住宅は国をあげて普及促進が図られているのでしょうか。LCCM住宅が注目されている背景をご紹介しましょう。
これまでずっと世界中でCO2排出量が増えていて、地球が温暖化しています。2015年にはCOP21(地球温暖化対策について話し合う国際的な会議)が開催され、温室効果ガスの削減目標が「2030年までに、2013年比で26%削減」に決まりました。
これを実現するには、家庭部門からのCO2削排出量を4割削減する必要があります。そこで住宅の高断熱化や機器の効率化を図るためにZEH住宅が生まれました。
しかし、ZEHにするために断熱材や太陽光発電を増やすと、その分の生産や廃棄でCO2の排出量も増えます。この排出量が削減量を上回っては意味がありません。そこで、住宅のライフサイクルを通してCO2排出量をマイナスにするため、LCCM住宅が誕生したのです。
LCCM住宅のメリットとデメリット
つづいて、LCCM住宅のメリットとデメリットをご紹介します。
LCCM住宅のメリット
LCCM住宅のメリットは、ZEH住宅のメリットとほとんど同じです。代表的なものを3つご紹介しましょう。
月々の光熱費が安くなる
LCCM住宅は、ライフサイクルのうち「居住中」のエネルギー消費量がマイナスになることを目指します。そのため、LED電球やエコジョーズ(高効率給湯器)などの省エネ設備を導入しますので、電気代やガス代の低減が期待できます。
また高断熱化によって家自体の保温能力が高くなり、少ないエネルギーで室温を一定に保てるようになります。その結果、冷暖房機器の消費エネルギーが少なくなり、光熱費の節約につながります。
太陽光発電でつくった電気を自家消費すると、日々の電気代が抑えられます。余った電気は売れるので、売電収入が得られます。消費電力が低いLCCM住宅は余剰電力を生みやすく、一般住宅より多い売電量が期待できます。
医療費の低減が期待できる
省エネで断熱性能が高いLCCM住宅は、家中の温度差をなくしやすく、どの部屋も快適な環境で過ごせます。その結果、体へのストレスが減り、一部の病気にかかりにくくなります。
ちなみに国土交通省の調査によると、室温18度以下の住宅に住む人は、18度以上の住宅に住む人に比べて以下の傾向があるそうです。
- 総コレステロール2.6倍
- 心電図異常所見あり1.9倍
- ヒートショックリスク約1.8倍
LCCM住宅なら体への負担が少なく、医療費の低減が期待できます。
環境に優しい
LCCM住宅はZEH住宅に勝る「環境に優しい住宅」です。住宅のライフサイクルすべてを通してCO2排出量をマイナスに抑えます。地球のサステナブル(持続可能性)を考えたとき、欠かせない住宅と言えるでしょう。
LCCM住宅のデメリット
つづいてデメリットを3つご紹介します。
初期コスト(建築費)が高い
LCCM住宅は、以下の建築資材や住宅設備を使います。
- 太陽光発電
- 性能が高い断熱材
- 断熱性能が高い窓サッシ
- 高効率の住宅設備
上述の建築資材や住宅設備はいずれも高価で、建築費が高くなります。
屋根や間取りの形が制限される
LCCM住宅では、太陽光発電量が多ければ多いほど、早期にCO2排出量が正味でマイナスになります。ですから、少しでも多くの太陽光パネルを積めるように屋根形状を考えます。その結果、屋根の形状や流れる方向に制限が生まれ、それが間取りにも影響することがあります。
LCCM住宅を建てられる建築会社が少ない
LCCMという考え方は10年くらい前からあったのですが、住宅として活発に商品化されるようになったのはここ数年です。ですから、まだ先進的な建築会社しか対応していないのが現状です。
もし、あなたがLCCM住宅を建てたいなら、まずはそれを建てている建築会社を探し出すところから始めなければなりません。
LCCM住宅の要件・認定基準
つづいて、LCCM住宅の要件をご紹介します。まずは、対象物件と申請者、審査をおこなう機関からご説明しましょう。
- 対象建築物:新築の一戸建て専用住宅(竣工後3年以内のもの)
- 申請者:建築主、設計者、施工者、販売者等
- 審査:一般財団法人建築環境・省エネルギー機構(IBEC)内に設置する認定委員会
次に、認定の基準をご紹介します。LCCM住宅の認定を受けるには、下記1、2のいずれかを満たす必要があります。
- CASBEEの戸建評価認証制度に基づき認証された環境効率ランクがSまたはAであり、かつライフサイクルCO2ランクが「☆☆☆☆☆」である住宅
- 国土交通省がおこなうサステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)LCCM住宅部門において、補助金の交付を受けた住宅
「CASBEE」とは、建築物を環境性能で評価し格付けする手法のことです。「ライフサイクルCO2ランク」は、ライフサイクルを通したCO2の排出率によって「☆」の数でランクづけをおこなっています。
つづいて、2番目の要件にある「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」の補助金について解説します。
LCCM住宅が利用できる補助金制度
国土交通省がサステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)において補助金制度を設けています。この事業は平成30年度にLCCM住宅部門を創設していて、補助金の交付を受けることでLCCM住宅の認定が得られます。
補助金の交付を受けるための基本的な要件は、以下のとおりです。
- ライフサイクルCO2を算定し、結果ゼロ以下となるもの
- ZEHの要件をすべて満たしたもの
- 住宅として、品質が確保されたもの
ZEH住宅の要件を簡単にご紹介しておきましょう。
- 一次エネルギー消費性能:太陽光を除く一次エネルギー消費量が省エネ基準の-20%
- 外皮性能:強化外皮基準
- 創エネ性能:太陽光発電等により正味ゼロエネルギーとなる
ZEH住宅の詳細は、以下の記事でご確認ください。
》ZEH(ゼッチ)住宅とは?なにが得なの?認定条件は?簡単に解説
「住宅として、品質が確保されたもの」については「CASBEE B+ランク以上」または同等の性能が必要です。ただし、長期優良住宅の認定を受けた住宅はこの限りではありません。
なお、この補助金制度では、掛かり増し費用(通常の戸建て住宅と比べてLCCM住宅化で要する費用の増加分)の1/2が補助されます。補助額の上限は「125万円/戸」です。
採択方式が「事前枠付与方式」ですので、サステナブル建築物等先導事業に採択されている建築会社しか使えません。ご利用になられたい方は、建築会社にLCCM住宅の補助金制度が使えるか確認してみましょう。
【まとめ】LCCM住宅とは?
LCCMは「Life Cycle Carbon Minus (ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)」の略で、LCCM住宅は「住宅のライフサイクルを通じてCO2排出量を正味マイナスにする住宅」を指します。
LCCM住宅は光熱費が安く、太陽光発電による余剰電力の売電も期待できます。また、家自体の保温能力が高く、少ないエネルギーで室温を一定に保てるでしょう。
今後の新築住宅では、ZEHやLCCM住宅が標準となる見込みです。これから家づくりを始められる方は、ご自宅の性能をLCCMにするか、一度ご検討ください。
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