注文住宅の打ち合わせの中で、とくに楽しいのが住宅設備の選定です。中でもショールームでキッチンを見るときは、どのご家庭も真剣そのもの。奥様は、一番気合いが入るところではないでしょうか。
とは言え、キッチンメーカーはけっこうな数があり「どこを選んだらいいのかわからない」とか「建築会社の標準仕様品以外のキッチンも知りたい」とお感じになる方も多いでしょう。
そこで本稿では、主要な国内キッチンメーカー6社をピックアップして、キッチンの特徴をご紹介したいと思います。キッチン選びの参考にしてください。
システムキッチンメーカー6社の特徴
初めて国内でシステムキッチンが開発されたのは1973年のことで、以来システムキッチンの進化は半世紀の歴史を経て今も続いています。
とは言え「デザイン、掃除のしやすさ、収納力、節水」といった基本性能は高水準に達し、工夫の余地が少なくなっています。競合他社との差別化は難しく、価格設定も主要メーカーは極端に違いません。
そんな状態ですから、われわれ建築業界の人間ですら違いを理解するのに努力が要ります。一般のお施主様なら、なおさらでしょう。以下の解説が、あなたが効率的に違いを知る一助になれば幸いです。
LIXIL(リクシル)のシステムキッチンの特徴
リクシルは「トステム、INAX、新日軽、東洋エクステリア、サンウェーブ工業」の5社が吸収合併してできた会社で、システムキッチン業界の最大手メーカーです (シェアはおおよそ3割)。
「窓サッシ、ドア、フローリング」などの建材製品や「キッチン、風呂、トイレ」などの水回り製品を豊富に取りそろえているので、1社で空間全体のトータルコーディネートができます。
システムキッチンはサンウェーブ工業から受け継いでいて、主な特徴は以下の2つです。
- シンプルで洗練されたデザイン
- 製品の価格帯が広く、比較的リーズナブル
リクシルのシンプルで洗練されたデザインはどんな空間にもなじみやすく、インテリアとしても映えるので人気です。製品の価格帯が広く、比較的リーズナブルです。
2020年11月現在のラインナップは、ベーシックモデルからハイエンドモデルまで料理の楽しみ方に応じて選べる3タイプと、車椅子や座ったままでも使いやすいタイプを展開しています。
- リシェル
- アレスタ
- シエラ
- ウエルライフ
Takara standard(タカラスタンダード)のシステムキッチンの特徴
タカラスタンダードと言えば、ホーロー。1912年創業で、1945年から家庭用ホーロー鉄器の製造を開始しています。ホーロー工業のパイオニアと言っていいでしょう。
キッチンメーカーとしては、ホーローを武器に独自路線をひたすら走っている印象です。個性的ではありますが、業界シェア2位(シェア約2割)の実力あるメーカーでもあります。
キッチンにもふんだんに使われている高品位ホーローは、鋼板にガラス質を焼き付けて密着させた素材で、多くのファンがいます。ホーローキッチンの特徴を3つご紹介しましょう。
- 耐久性が高く、キズや熱に強い
- 清潔で、掃除のしやすさもバツグン
- 基材が鋼板なので、磁石がくっつく
ホーローは耐久性が高く、何十年も前のキッチンがまだ現役で使われています。ガラスコーティングにより掃除がしやすく、キレイな状態が長続きします。とくに、油汚れの落ちやすさは特筆すべきものがあります。
ホーローは基材に鋼板を使っていますので、磁石がくっつきます。これが便利で、マグネットを利用した収納オプションを豊富に取りそろえています。
キッチンのラインナップは、ハイエンドモデル2種類とスタンダードモデル2種類、合計4種類準備しています。
- レミュー
- トレーシア
- エーデル
- リフィット
クリナップのシステムキッチンの特徴
クリナップは、1949年に座卓の製造販売会社として創業した老舗メーカーです。業界3位の大手で、約2割のシェアを取っています。
クリナップは「日本で初めて多目的システムキッチンを開発した企業」と言われています。業界初の簡易施工型システムキッチンもクリナップの開発によるもので、日本の台所に工業化を持ち込んだ立役者と言っていいでしょう。
クリナップのキッチンの特徴は、以下のとおりです。
- シンプルで工業的なデザイン
- ハイクラスキッチンは構造もステンレス製で頑丈
- ガスとIH、両方使えるハイブリッドコンロ
クリナップはキッチンにステンレスをうまく使い、オシャレにまとめるのが得意です。無機質で洗練された意匠は、若い方に人気です。
ステンレスは熱や水、カビ、サビに強いのでキッチンに適した素材です。一部のキッチンは構造にもステンレスを使っていて、とても頑丈です。
システムキッチンのラインナップは、ステンレス構造のハイエンドモデル2種類と、スタンダードタイプ、コンパクトタイプを用意しています。シンクユニットと調理台、コンロが分かれているセクショナルキッチンもあります。
- セントロ
- ステディア
- ラクエラ
- コルティ
- セクショナルキッチン
Panasonic(パナソニック)のシステムキッチンの特徴
パナソニックは言わずと知れた大手電機メーカーですが「住宅設備、建材、照明」のメーカーとしても有名です。どれもスタイリッシュで機能性が高く、採用されるお施主様が多くおられます。
キッチンのシェアは業界4位で、ここまでご紹介した3社と合わせると全体の8割に達します。パナソニックのキッチンの特徴をご紹介しましょう。
- 主婦の声を取り入れた商品開発が上手い
- 食器洗い機などの電機製品が自社開発できる
パナソニックは開発力が高く「こんなの欲しかった」を作ってくるメーカーです。フェイク素材(大理石調、木目調など)の再現性や意匠性も優れていて、キッチンの天板や扉面材にその力が発揮されています。
とくに主婦の声を取り入れた商品開発が得意で、各所に工夫が凝らされています。その一例をご紹介しましょう。
- 掃除がラクになる工夫 ⇒ スキマレスシンク、ほっとくリーンフード
- 調理がしやすく時短できる工夫 ⇒ トリプルワイドコンロ、スラくるネット
- 秀逸な自動化 ⇒ エコナビ、フルオートオープン
キッチンのラインナップは、シンプルな汎用モデルから素材や使い心地にこだわったハイエンドモデルまで過不足なく用意しています。リフォームに対応しやすいモデルもあります。
- L-CLASS
- ラクシーナ
- リビングステーション V-style
- リフォムス
TOTO(トートー)のシステムキッチンの特徴
TOTOは水回りに強いメーカーで、トイレや洗面器などの衛生陶器で国内トップのシェアを誇ります。洗浄便座の代名詞にもなっている「ウォシュレット」はTOTOの商標であり、ユニットバスはTOTOが最初に開発しました。
キッチンは、堅実で高品質なものを供給しています。主な特徴を2つご紹介します。
- 水栓やシンク形状など、オリジナル色が強い
- 省エネ性や操作性がよく掃除もしやすい
「水ほうき水栓、タッチ式水栓、足踏み式の水栓」などTOTOの水栓は独特で、節水効果が高く経済的です。シンクにゴミが溜まりにくい「すべり台シンク」も、この手があったか!という感じで秀逸です。
ラインナップはシンプルで、ハイエンドモデルとスタンダードモデル、各1種類ずつを準備しています。
- ザ・クラッソ
- ミッテ
TOCLAS(トクラス)のシステムキッチンの特徴
トクラスは楽器メーカー・ヤマハの住設部門が前身で、2013年まで「ヤマハリビングテック」という社名でした。ピアノやFRP製品の製造から得た独自技術をキッチンづくりに活かしていて、他のキッチンメーカーが真似できない独自性を持っています。
トクラスのキッチンの特徴を1つあげるとすれば、なんといっても人造大理石を使ったワークトップ(天板)でしょう。カウンターとシンクが一体化して継ぎ目がなく、美しさと掃除のしやすさを兼ね備えています。シンクのカラーバリエーションも豊富です。
ラインナップは上品でかわいいスタンダードモデルから、上質な家具やピアノを連想させるハイエンドモデルまで3種類用意しています。
システムキッチンの選び方
建築会社は、業務や仕入れを合理化するために扱うキッチンを絞り込んでいます。選ばれたキッチンは標準仕様品と呼ばれ、たいていの会社が上述のキッチンの中の1~2製品を採用しているでしょう。
ですから、お施主様が標準仕様品以外のキッチンも見てから選びたいとお考えでしたら、その意思を建築会社に伝えて、各メーカーのショールームを回る必要があります。
とは言えキッチンはオーダーメイドですから、ショールームで説明を受けながら各パーツの選定をするのはなかなか大変な作業です。毎週末に1社見に行くとして、6社回るなら1ヶ月半かかってしまうので、あまり現実的ではありません。
もしどうしてもたくさんのメーカーを見て比べたいのであれば、まずカタログをもらうついでに特徴だけ聞いて回るといいでしょう。それなら1日に2~3社回れて、建築会社に同行してもらう必要もありません。
ショールームのアテンダントの話を聞き、カタログを見て十分検討したら、候補を1~2社に絞り込みましょう。そのあと建築会社と一緒にショールームを再訪して、しっかりパーツ選びをすればOKです。
なお、キッチンの選び方については失敗例を以下の記事でご紹介しています。あわせてご覧ください。
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