土地や建売住宅を買う場合、諸費用の相場が「物件代金の◯◯%」などと表現されることがあります。具体的には「6~10%程度」と説明されるケースが多いでしょうか。
それに比べ、注文住宅の諸費用は簡単に「物件代金の◯◯%」と言えません。今回はその理由をご説明しますので、注文住宅をご検討中の方は参考にしてください。
注文住宅の諸費用がシミュレーションしづらい要因
前回、注文住宅の諸費用項目をいくつかご紹介しました。
前回:注文住宅を建てるときにかかる諸費用の内訳10項目と参考価格
リンク先の記事でご紹介した項目の中で、2つほど金額が読みづらいものがあります。この2つがまったくかからない物件は10万円程度で済むのに対して、200万円以上必要になる物件もあります。
どちらも込み入った調査をしないと金額が確定しない性質のもので、よって注文住宅の諸費用は簡易的なシミュレーションがしづらいのです。
それでは、その2つの項目「地耐力調査費・地盤補強費」と「水道管引込工事費」について詳しく解説していきましょう。
地耐力調査費・地盤補強費
建築基準法では地耐力(地盤の強さ)によって基礎(建物を支える鉄筋コンクリートの構造)の規定があります。地耐力調査を実施しろとは書かれていませんが、実質的に必要です。
地耐力が弱い場合は地盤を補強しますが、地耐力はやや大掛かりな調査をしてみないとわかりません。この調査は建物の形と配置が決まらないとできないので、土地を買う前に地盤補強が要るかどうか正確に判断するのは困難です。
ちなみに、一般的な戸建て住宅規模の地耐力調査は「スウェーデン式サウンディング調査」という方法を使います。先端がねじ状になった鉄の棒を5ポイント(建物の配置計画をしている四隅と中央)に貫入させ地盤の硬さを調べます。
地盤調査は専門的な部分が多く、施主や建築会社には調査結果が適正かどうか判断するすべがありません。着工まで時間的猶予もないので、素早い判断を迫られます。その結果、地盤調査業者が優位な状態で話が進んでいきます。
地盤調査会社は調査結果と地盤改良工事に対して保証を出す都合上、より高い安全性を求めがちです。地盤改良の工法は数々あるのに、往々にして地盤改良業者が得意な工法を選択するケースがあります。
結果的に補強工事が必要なかったり過剰だったりすることも、少なくないのです。それを解決するひとつの方法として「セカンドオピニオン」があります。
セカンドオピニオンでは、調査業者とは違う業者に調査結果を解析してもらい意見を聞きます。「過剰」だけでな「不足」と言われることもあるので、より信頼できるほうの業者を採用するとよいでしょう。
「補強が出やすい土地を買うな」とか「地盤が硬いエリアを買え」と言われますが、ジャパンホームシールドの地盤サポートマップを見るとわかるとおり、一定の傾向はあるものの同じエリアに硬い地盤と柔らかい地盤が混在しています。
参考:地盤サポートマップ
ここは絶対に補強が要らないと言い切れる場所はないので、予算を確保しておきながら、適正な補強レベルになるように探っていくのがよいのではないでしょうか。
水道管引込工事費
もうひとつ、水道管引込工事(取付工事、接続工事とも言う)も予算を見積もりするための調査が必要です。
水道管の引き込みは、大きく2つの費用がかかります。ひとつは自治体への納付金で、もうひとつは工事費(設計や検査を含む)です。
自治体への納付金は上下水道の使用者が少しずつ負担し合う仕組みになっていて、水道の維持管理費用に当てられます。呼び方はいろいろですが、上水は「加入金」、下水は「受益者負担金」と呼ぶことが多いでしょうか。
上水道の加入金は、給水装置(道路に埋設された上水道本管から宅内の水栓まで)の新設や水道管の口径をアップする際に支払います。下水道の受益者負担金は、その土地について1回限り賦課(ふか)されます。
建て替えなどで既存の水道管がそのまま使える場合は、加入金と新規水道メーターの取り付け、公共汚水マスの設置などに10万円程度の費用がかかります。
いっぽう始めて水道管を引き込む土地や既存の水道管の口径をアップする場合は、引込工事費と上水の加入金だけで50~70万円程度の費用がかかります。下水道負担金は自治体によって違い、人口が少ない地域は高くなる傾向があります。
この「下水道負担金」も合わせると、既存の水道管があるかないかで50~100万円ぐらい費用が変わってきます。さらに引込工事は、前面道路のアスファルトが厚かったり、引き込む距離が長かったりすると大幅に工事費が高くなります。
買った土地を調べた結果、このように付帯工事に何百万円もかかることが判明するケースもあります。注文住宅建築の予算を組むときは、かなり余裕を見ておくほうが安心です。
注文住宅の諸費用額のブレを少なくするには?
これから買おうとしている土地が、地盤補強と水道管引込にいくらかかるのか。10万円で済むのか、それとも200万円かかるのか。そこがわからずに購入を進めるのは、あまりに冒険的です。もう少し金額の振れ幅を少なくする方法はないのでしょうか?
地耐力に関しては運を天に任せるしかありませんが、先述の「地盤サポートマップ」などを参考に地盤が硬い傾向があるエリアを探すことはできます。
水道の引込費用に関しては、自治体から「指定給水装置工事事業者」に指定されている業者に調査・見積もりを依頼することができるでしょう。欲しい土地の敷地内に水道管が見当たらないなら、多少費用をかけてでも調査してもらうほうが良いかもしれませんね。
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